紺珠

手で撫でると記憶が蘇るという紺色の玉

鈴木 克彦(2012) 『高校生の英語学習のメタ認知的知識の自己再構築:学校設定科目SLPの「多文化コミュニケーション学」での試み』

こんばんは。

今日は白井恭弘先生のブログ、7月に更新された『「外国語学習の科学」を高校生が読んだら』で紹介されていた、鈴木克彦先生による実践報告のレビューです。

鈴木 克彦(2012)『高校生の英語学習のメタ認知的知識の自己再構築 : 学校設定科目SLPの「多文化コミュニケーション学」での試み』 名古屋大学教育学部附属中高等学校紀要. 56, 129-138.

章立てはこんな感じです。

  1. 問題点と授業のねらい
  2. メタ認知とは
  3. 「外国語学習の科学」(白井恭弘著)の内容紹介
  4. 名大附属高校の新教科(SLP)の授業「多文化コミュニケーション学」について
  5. 授業実践
  6. 考察
  7. まとめ:成果と課題

以下、要約やら感想やら。

目的

高校生の英語学習のメタ認知的知識の枠組みを従来の知識偏重型学習方法からコミュニケーション獲得型の学習方法への変換ないしは拡張を図るべく、科学的根拠をもとにした言語学習に関する学説を少人数編成のグループ学習で輪読させ、現在の自己の英語学習を学習目的に沿うものにさせる手だとする。

授業方法

本実践報告に登場するのは名大附属高校の2年生。SSH指定校ということなので、"進学校"なのだと思います。学校設定科目のSLP(Science Literacy Project)の「多文化コミュニケーション学」という授業で『外国語学習の科学』を輪読。

輪読の詳細

白井先生のご著書の各章を生徒が授業前に読み、授業では毎回レポート担当者(2〜3名)が内容を報告(20分)。そしてその後に皆で内容確認を行い、レポーターから考えたテーマでクラス全体、或いはグループで討論を行う(20分)。授業の最後に学んだことや感想をまとめる(10分)。これを6回実施する。

また夏休みの間にはグループで調べ学習をする。内容は科目名「多文化コミュニケーション」に関連したもの。そしてそれを夏休み明けの授業でポスター発表を行う。

質問紙調査

この科目の開講前後で質問紙調査も行なっています。質問事項は20問で5件法(※詳細はPDFを参照)。その結果、「英語学習に対する自信」及び「英語の授業外で英語を読む」について有意差が認められました。

また自由記述で「どのように英語の学習をしているか」「どのような将来像をもっているか」という質問にも生徒は回答しています。詳細はPDFを見て頂きたいのですが、自分・自分が実践している学習方法をきちんと客観視できている生徒さんが多く、書く内容がしっかりしています。

それと論文には「探索的因子分析」の項もあったのですが、「探索的因子分析って何やっけ…」となったので飛ばします(笑) f(^^;

感想・コメント

こういった取り組みは面白そうとは思うのですが、実践校は特殊な環境なので一般的な高校ではなかなか実現するのは難しいのではないかなーと思います。

学習方法って、授業の中で教員がちょこっと言ってみたり、「どうやって英語を勉強したらいいか分からない」と生徒が個人的に質問してきた時に教員が答えたりしますが、やはり高校生からは「( ゚д゚)ポカーン」といった反応がよく返ってきます。彼ら(私が担当している生徒たち)にメタ認知的な思考・活動を求めるのは要求が高いのかなー。でもこれって高校卒業以降は大事になってきますよね。

私がこの白井先生の本を拝読したのは大学4回生。この実践報告と同様に、私も高校生の時に読んでみたかったなと思いました。あの頃はひたすら教科書の1文1文を逐一訳し、分からない単語も逐一辞書で調べ、文法はパターンプラクティスでしか学習していませんでした。それ以外の学習方法なんて考えもせず、一心不乱にこの学習方法に固執していました。それに先生も教えてくれませんでした。担当する生徒で英語・外国語学習に積極的な生徒にはこの本を紹介したいです。

機会があれば、ぜひ系統的に時間をかけてこういった科目を担当してみたいです。

では今日はこのへんで。お休みなさい。